工場における作業、又は製品や部品を対象とした品質管理、原価管理、納期(工程)管理は、第1次管理として重要と考えられています。そのため工場では、品質管理部門、原価管理部門、納期(工程)管理部門などの専門部門を設けて管理を行っています。
その一方で、ホワイトカラーの業務を対象とした品質管理、原価管理、納期(スケジュール)管理は多くの企業ではあまり重要とは考えておりません。製品の品質、原価、納期にはあまり影響がないと考えているからです。
よって、業務管理は担当者が自ら行うか、直属上司が部下の業務管理を行っている程度です。よって、業務の品質、原価、納期に問題が生じても、上司に叱られるか、ユーザーである直接部門から文句を言われる程度です。
しかし、実際には、業務の品質、原価、納期に問題が生じれば、直接部門の作業に問題が生じ、その結果、製品やサービスに問題が生じ、取引先や顧客に迷惑をかけることになるのです。
例えば、品質管理の方法が悪ければ、直接作業や製品の品質が悪くなります。そして、顧客はその企業の製品を買わなくなります。
つまり、業務の品質悪化⇒直接作業や製品の品質悪化⇒顧客の購買意欲の低下、と順に影響するのです。
また、業務の品質が悪いということは、経営管理の品質が悪いということです。つまり、経営管理の技術レベルが低いということです。早い話が、経営者や管理者の管理能力が低いということです。
これと同様に、業務の原価が高ければ、製品やサービスの原価も高くなり、業務時間が長くなれば、製品やサービスの納期も遅くなるということです。よって、結果的に取引先や顧客にしわ寄せがいくことになります。
また、意思決定や実行が遅くなり他社にも後れを取ることになるので、取引先や顧客が離れて行き、売上や利益が減少するのです。よって、業務の品質管理、原価管理、納期(スケジュール)管理はきちんと行わなくてはいけません。
業務の品質管理とは、ムダな業務を廃止・削減したり業務ミスを防止したりすると共に、業務品質を良くすることです。業務品質を良くするとは、経営管理技術を高くすることです。
ムダな業務を廃止・削減したり業務ミスを防止したりすることによって、業務コストが削減できます。また、経営管理技術を高くすることによって売上が増加します。この結果、利益が増大するのです。
本書では、ムダな業務を廃止・削減したり業務ミスを防止したりするための具体的な方法を第3章で説明いたします。また、業務品質を良くするために経営管理技術を高くする具体的な方法は第4章で説明いたします。
しかし、業務品質を良くしようとすれば業務コストがかかります。そこで、考えなくてはならないことは、業務品質と業務コストの関係です。
業務品質を良くするために、業務時間(コスト)をいくらかけても良いわけではありません。業務品質は良くなったがコスト高となってはダメです。
そこで、品質とコストとの関係を調べて、どの程度の品質にすべきかを会社の業務品質方針として決定する必要があります。これができていない企業が、例えば、業務ミスを防止するためと称して、二重チェック、三重チェックを行い、業務時間(コスト)をかけ過ぎてしまうのです。
また、経営管理技術を高めるためと称して、流行している技術を導入するのです。例えば、最近、流行している「コンプライアンス経営」を導入し、多くの企業では、金銭に関わる業務を過剰にチェックしています。
例えば、従業員の「出張旅費精算申告書」を時間をかけて二重、三重にチェックしている企業が未だに多いのですが、チェックする必要は全くありません。従業員の申告通りに支払えば良いのです。
なぜなら、従業員が仮に金額をごまかして申告したとしても数百円程度ですが、チェックのための業務コストは1件当たり数千円かかるからです。出張が多い企業では年間で数千万円の損失になっています。要するに、従業員を信用していない企業が、多大の損失を生んでいるのです。
ところで、「コンプライアンス経営」の本来の意味は、「企業や経営者の法令順守」であり、従業員の不正防止ではありません。法令を順守しなければならないのは経営者なのです。
さて、下記の図をご覧ください。これは、品質コスト曲線と呼ばれています。品質とコストの関係を表したものです。上の図が理論的な曲線で、下の図が実務的な曲線の事例です。実務的な曲線は企業によって異なるので、自社で実際に調査した結果を基に図を作成して下さい。


この図で、失敗コストとは、業務ミスによって発生した損失コストです。予防コストとは、業務ミスが生じないようにするための教育・指導・訓練などの業務コストです。評価コストとは、業務ミスがあるかないかをチェックし、ミスがあった場合には原因を追究し、2度とミスが生じないように対策するための業務コストです。
なお、業務コストの計算方法については、「3-4 業務の目的別・機能別原価計算」で説明いたします。
ところで、業務には2種類あって、企業外部に向けて行う業務と企業内部に向けて行う業務があります。企業外部とは、取引先や顧客、銀行、役所、地域住民などです。企業内部とは、経営者と従業員です。つまり、企業の利害関係者を外部と内部とに分けたわけです。その理由は、外部に向けた業務の品質管理と内部に向けた業務の品質管理とを区別するためです。
企業外部に向けた業務は、厳しくチェックする必要があります。つまり、ある程度コストをかけてもミスが生じないようにします。コンプライアンス(法令順守)もその1つです。また、取引先や顧客が満足するように、競合他社より業務の品質レベルを高くしなければなりません。
その一方で、企業内部に向けた業務は、品質が多少悪くても、また、ミスが生じても取引先や顧客に迷惑をかけることがありません。法律も関係ありません。また、修正が簡単にできます。よって、企業内部に向けた業務はできるだけコストをかけないようにします。これが業務の品質管理のポイントです。
業務の原価管理とは、業務のあるべき姿における原価(業務コスト)を目標として設定し、目標に近づくように業務コストをできるだけ削減することです。
業務のあるべき姿とは、会社の目的や機能(役割)と各業務の目的や機能(役割)との整合性が図られていることです。つまり、各業務が会社の目的や機能を果たしていることです。これについては、「3-2 業務の目的と機能(役割)の明確化」で具体的に説明いたします。
会社の目的と機能は、経営理念、経営戦略(事業戦略)、事業領域、中期経営計画、経営組織などに具体化されています。よって、経営戦略、中期経営計画などを実施するために、各業務を行うわけです。
よって、各業務の目的と機能が経営戦略や中期経営計画を実施するようになっていることが業務のあるべき姿です。そして、その時の原価が業務のあるべき原価であり目標原価となります。
しかし、多くの企業では実際にはそうなっていません。経営戦略や中期経営計画とは関係のない業務がたくさんあります。なぜなら、場当たり的に業務を指示命令し、かつ実施するからです。そのため、ムダな業務ばかりを実施しており、肝心の経営戦略や中期経営計画が確実に実施できないのです。
それどころか、多くの企業には、目的がないとか目的が不明確な業務がたくさんあります。そこで、まず、このようなムダな業務を発見して廃止・削減します。次に、目的や機能を果たせるように、業務内容や業務方法を工夫したりするのです。これらが、業務の原価管理です。
業務の原価管理は、業務の効率化でもありますので、第3章で詳しく説明いたします。また、会社の目的と機能を具体化する方法、すなわち、経営理念、経営戦略、事業領域、中期経営計画、経営組織などの策定・設定・構築方法などについては、経営の骨組みの再構築として第4章で詳しく説明いたします。
業務の納期管理とは、業務計画(スケジュール)を立案し、計画通り業務が実施できるように、また、納期に間に合うように業務を統制することです。
業務計画の基になるのは、中期経営計画と(短期)経営計画です。したがって、まず、次のように、中期経営計画から各人の業務(職務)計画まで順にブレイクダウンします。
中期経営計画⇒経営計画⇒各部門(部、課、係)の業務計画⇒各人の業務(職務)計画
次に、これらの計画が確実に実施出来るように、各部門(部、課、係)、各人で納期管理(スケジュール管理)を行います。納期管理の方法は工場で実施している方法を参考にすれば良いと思います。
例えば、簡単な計画であれば、ガントチャートを用いて、大日程計画(3ヶ月~半年)、中日程計画(1ヶ月)、小日程計画(1週間)を立てて管理すれば良いですし、複雑な計画であればPERT/CPMを用いて管理すれば良いと思います。いずれも、ホワイトボード、あるいはパソコンで管理できます。
毎日、だらだらと遅くまで残業を行っている企業は、当然ですが、他社との競争に負けます。なぜなら、現在では国際的な競争の激化により、業務スピードが要求されているからです。ITを活用しても、毎日、だらだらと業務を行っていれば、ITを活用しないのと同じです。
企業間競争では、質の高い業務を、安く、速くできる企業が勝つのです。つまり、工場の作業と同じように、業務のQ(品質)、C(原価)、D(納期)が問われるのです。したがって、デスクワークにおいても、業務計画を立てて業務を実施し、その実施時間を記録し、改善・効率化を進め、次回の計画に反映させるようにします。
つまり、計画(プラン)、実施(ドゥ)、確認(チェック)、対策(アクション)を行います。要するに、業務管理を行うのです。
「2-5 業務分類ごとの業務時間の計画設定と測定記録」で説明しましたように、既に業務時間を計画設定しました。したがって、業務を実施した時に、実際にかかった時間を測定記録すれば良いのです。
パソコンを使って行うデスクワークでは、業務(職務)の始めと終わりの時点で、クリック1つで時刻を記録できるようにしておけば簡単に実際時間が記録できます。また、これによって、業務(職務)ごとの実際のコストも計算できます。
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