最初に、職務の定義について説明します。広辞苑によれば、「職務とは担当する任務」のことです。つまり、1人ひとりが担当する仕事のことです。ちなみに、業務については、広辞苑によれば、「業務とは事業・商売などに関して、日常継続して行う仕事」のことです。つまり、業務は会社が継続して行う仕事のことです。
よって、本書ではホワイトカラーが継続して行うデスクワークを業務と呼び、この業務を1人ひとりの担当者に分割・分担した場合に、個別業務、又は職務と呼びます。よって、個別業務と職務とは同じ意味です。
さて、職務内容の明確化とは、1人ひとりが行うの職務の内容(方法)を誰にでも分かるようにすることです。つまり、誰もがその職務をマネできるくらいに詳しく記述するのです。
例えば、「〇〇報告書の作成」の場合、(1)△△を見る、(2)△△について考える、(3)△△について書く、(4)△△を見直す、(5)△△を書き直す・・・・・・のように誰が見てもその職務内容(方法)が分かるように分解して記述するのです。
しかも、この例のようにありのままに記述するのです。きれいごとを書いてはいけません。なぜなら、ムダな職務を廃止・削減して改善・効率化するのが目的だからです。実は、この方法は工場の作業内容(方法)を記述するIEの技術です。
職務内容の記述は、言ってみれば職務マニュアルの原稿を作成するようなものです。実際に、業務効率化活動によってムダな業務を廃止・削減し、さらに業務改革活動によって新規業務を追加した後には、職務記述書が職務マニュアルとなります。
職務マニュアルは新入社員教育や職務の引き継ぎを行う時だけでなく、業務(職務)管理にも必要です。なぜなら、職務マニュアルは職務内容(方法)が詳しく書かれているわけですから、職務内容(方法)を改善することによって、業務(職務)品質をより良くしたり、業務(職務)時間や業務(職務)コストを削減したりすることができるからです。
ところが、ホワイトカラーの多くの人たちは職務内容(方法)を詳細に、かつありのままに書いたことがありません。なぜなら、自分が行っている職務の内容(方法)を詳細に、かつありのままに書くのは嫌だからです。その理由は、職務の処理能力が人に知られてしまうからです。そのため、各自の経験と勘によって職務内容(方法)を決めて実施しているのです。
よって、実際に、「職務内容は書きたくない」「職務記述はしたくない」という人が多いです。それでもあえて書いてもらうと、抽象的な書き方になり、しかもきれいごとになってしまいます。しかし、これでは職務の改善・効率化はできません。
ちなみに、日々、改善・効率化を行っている工場現場では、図面及び仕様書を基に、作業管理者、上司、作業担当者などで話し合ってより良い作業方法を決め、作業マニュアルを作成しています。作業方法が決まらなければ作業計画を立てることも、作業管理をすることもできないからです。そのうえで、日々作業改善を行い、より良い作業方法を追求しているのです。
このことは、流通(卸、小売り)業においても、サービス業においても全く同様です。売上を増やすためには販売方法を工夫しなければなりません。担当者任せの販売方法では売上は増えません。よって、最も売れると思われる販売方法を上司や同僚と話し合って決め、販売マニュアルを作成しています。販売マニュアルを作成する時には流通業やサービス業でも、IE技術を活用しているのです。
ところが、業務(デスクワーク)においては、担当者の経験と勘で職務内容(方法)を決めているのです。その理由は、多くの企業では業務計画を立てることがなく、また、業務管理をすることもないからです。要するに、よく言えば担当者任せであり、悪く言えば放任しているのです。
さて、職務内容の記述方法ですが、まず、基本的なことから説明します。各自が行っている職務内容(方法)を手順に沿って書いていきます。
この時に、業務要件が異なるため、職務内容が異なる場合には、それぞれ別に、「場合分け」をして書きます。また、自分が行っている職務の内容だけを書きますので、担当者が変るところで書くのを止めます。
書き方は職務内容が他の人でも分かるように分解しながら書きます。なぜなら、業務(職務)の見える化の目的はムダな業務(職務)を発見し、廃止・削減するためですが、そのためには誰が見ても職務の内容が分かるようにしなければならないからです。
なお、職務内容を書く際に業務要件を含めて書く人が大勢いますが、業務要件はできるだけ別に書いて、職務内容以外のことは書かないようにします。ただし、職務内容に直接書き加えた方が分かりやすい場合には、そのように書いても良いです。
例えば、「◯◯をメールで受け取る」「◯◯をエクセルで集計する」などのように、「メールで」とか「エクセルで」というのは業務要件ですが、このような場合には、職務内容に含めて書いてもかまいません。
ちなみに、工場の直接作業の場合は、主に手足を動かして行う作業なので、他の人でもその作業内容を見れば何をしているのか分かります。しかし、業務(デスクワーク)の場合は主に頭の中で行う思考・判断業務ですので、他の人が外から見てもその内容が分からないのです。
つまり、何をしているのか人が見ても分からないから改善・効率化ができないのです。ですから人が見て分かるように書くのです。つまり、頭の中で何を考え、何をしているかを書くのです。これが職務内容を記述するポイントであり、業務(職務)の見える化なのです。
例を挙げると、以下のようになります。
ちなみに、この書き方は大分類業務、中分類業務、小分類業務が工場における工程に相当し、職務が単位作業に相当します。
なお、工程とは、作業者が1人以上、又は機械1台以上が受け持つ作業範囲を言います。また、単位作業とは、1人の作業者が行う最小の作業単位で、2人で分担できない作業範囲を言います。
この考え方・方法は、工場で用いられるIE(管理工学)の考え方・方法であり、これをデスクワーク(業務)に適用したものです。
改めて、職務内容の記述方法を整理して説明すると次のようになります。これは、IEの作業マニュアルの記述方法とVEの目的と機能の記述方法の両方を業務に適用したものです。
上記4についてですが、通常、最も記述する分量が多い部門は総務部です。1年間の職務を記述するのに、A4の大きさで40枚から50枚必要です。職務の種類が非常に多く、しかも、1年に1回しか行わない職務が多いからです。
最も分量が少ない部門は研究開発部門で、1年間の職務を記述するのに、A4の大きさで数枚で済んでしまいます。1年間同じ職務を毎日繰り返し行っているためです。
なお、経営者(社長、役員)の場合は、1年間の職務を記述するのに、A4の大きさで2~3枚で済んでしまいます。なぜなら、1年中、同じ仕事ばかりで、通常、会議に出席することしかしないからです。
以下はある中小企業の職務記述書の記入例です。企業秘密に関わる固有名詞は削除、または仮名を用いています。なお、記入欄の職務目的については、「3-2 業務の目的と機能(役割)の明確化」をご覧ください。また、工程記号については、「3-1 業務の価値分析による無価値業務の廃止・削減」を、ベクトルについては、「3-7 市場(顧客)志向による内部管理業務の廃止・削減」をご覧ください。
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