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開発&コンサルティング

2-6 職務内容の明確化

1.職務内容の明確化とは

最初に、職務の定義について説明します。広辞苑によれば、「職務とは担当する任務」のことです。つまり、1人ひとりが担当する仕事のことです。ちなみに、業務については、広辞苑によれば、「業務とは事業・商売などに関して、日常継続して行う仕事」のことです。つまり、業務は会社が継続して行う仕事のことです。

よって、本書ではホワイトカラーが継続して行うデスクワークを業務と呼び、この業務を1人ひとりの担当者に分割・分担した場合に、個別業務、又は職務と呼びます。よって、個別業務と職務とは同じ意味です。

さて、職務内容の明確化とは、1人ひとりが行うの職務の内容(方法)を誰にでも分かるようにすることです。つまり、誰もがその職務をマネできるくらいに詳しく記述するのです。

例えば、「〇〇報告書の作成」の場合、(1)△△を見る、(2)△△について考える、(3)△△について書く、(4)△△を見直す、(5)△△を書き直す・・・・・・のように誰が見てもその職務内容(方法)が分かるように分解して記述するのです。

しかも、この例のようにありのままに記述するのです。きれいごとを書いてはいけません。なぜなら、ムダな職務を廃止・削減して改善・効率化するのが目的だからです。実は、この方法は工場の作業内容(方法)を記述するIEの技術です。

職務内容の記述は、言ってみれば職務マニュアルの原稿を作成するようなものです。実際に、業務効率化活動によってムダな業務を廃止・削減し、さらに業務改革活動によって新規業務を追加した後には、職務記述書が職務マニュアルとなります。

職務マニュアルは新入社員教育や職務の引き継ぎを行う時だけでなく、業務(職務)管理にも必要です。なぜなら、職務マニュアルは職務内容(方法)が詳しく書かれているわけですから、職務内容(方法)を改善することによって、業務(職務)品質をより良くしたり、業務(職務)時間や業務(職務)コストを削減したりすることができるからです。

2.職務内容を明確にすれば職務の処理能力が分かる

ところが、ホワイトカラーの多くの人たちは職務内容(方法)を詳細に、かつありのままに書いたことがありません。なぜなら、自分が行っている職務の内容(方法)を詳細に、かつありのままに書くのは嫌だからです。その理由は、職務の処理能力が人に知られてしまうからです。そのため、各自の経験と勘によって職務内容(方法)を決めて実施しているのです。

よって、実際に、「職務内容は書きたくない」「職務記述はしたくない」という人が多いです。それでもあえて書いてもらうと、抽象的な書き方になり、しかもきれいごとになってしまいます。しかし、これでは職務の改善・効率化はできません。

ちなみに、日々、改善・効率化を行っている工場現場では、図面及び仕様書を基に、作業管理者、上司、作業担当者などで話し合ってより良い作業方法を決め、作業マニュアルを作成しています。作業方法が決まらなければ作業計画を立てることも、作業管理をすることもできないからです。そのうえで、日々作業改善を行い、より良い作業方法を追求しているのです。

このことは、流通(卸、小売り)業においても、サービス業においても全く同様です。売上を増やすためには販売方法を工夫しなければなりません。担当者任せの販売方法では売上は増えません。よって、最も売れると思われる販売方法を上司や同僚と話し合って決め、販売マニュアルを作成しています。販売マニュアルを作成する時には流通業やサービス業でも、IE技術を活用しているのです。

ところが、業務(デスクワーク)においては、担当者の経験と勘で職務内容(方法)を決めているのです。その理由は、多くの企業では業務計画を立てることがなく、また、業務管理をすることもないからです。要するに、よく言えば担当者任せであり、悪く言えば放任しているのです。

3.職務内容の記述方法

さて、職務内容の記述方法ですが、まず、基本的なことから説明します。各自が行っている職務内容(方法)を手順に沿って書いていきます。

この時に、業務要件が異なるため、職務内容が異なる場合には、それぞれ別に、「場合分け」をして書きます。また、自分が行っている職務の内容だけを書きますので、担当者が変るところで書くのを止めます。

書き方は職務内容が他の人でも分かるように分解しながら書きます。なぜなら、業務(職務)の見える化の目的はムダな業務(職務)を発見し、廃止・削減するためですが、そのためには誰が見ても職務の内容が分かるようにしなければならないからです。

なお、職務内容を書く際に業務要件を含めて書く人が大勢いますが、業務要件はできるだけ別に書いて、職務内容以外のことは書かないようにします。ただし、職務内容に直接書き加えた方が分かりやすい場合には、そのように書いても良いです。

例えば、「◯◯をメールで受け取る」「◯◯をエクセルで集計する」などのように、「メールで」とか「エクセルで」というのは業務要件ですが、このような場合には、職務内容に含めて書いてもかまいません。

ちなみに、工場の直接作業の場合は、主に手足を動かして行う作業なので、他の人でもその作業内容を見れば何をしているのか分かります。しかし、業務(デスクワーク)の場合は主に頭の中で行う思考・判断業務ですので、他の人が外から見てもその内容が分からないのです。

つまり、何をしているのか人が見ても分からないから改善・効率化ができないのです。ですから人が見て分かるように書くのです。つまり、頭の中で何を考え、何をしているかを書くのです。これが職務内容を記述するポイントであり、業務(職務)の見える化なのです。

例を挙げると、以下のようになります。

F.採用・配置(大分類業務)
Ⅲ.採用計画の立案(中分類業務)
1.採用計画書の作成(小分類業務)
a.学卒の新入社員を採用する場合(場合分け)
(1)要員計画表を見る。(2)採用計画案を考える。(3)原案を書く。(4)原案を上司に渡す。(5)原案修正の指示を受ける。(6)原案を書き直す。(7)書き直した原案を読み直す。・・・・・・。

ちなみに、この書き方は大分類業務、中分類業務、小分類業務が工場における工程に相当し、職務が単位作業に相当します。

なお、工程とは、作業者が1人以上、又は機械1台以上が受け持つ作業範囲を言います。また、単位作業とは、1人の作業者が行う最小の作業単位で、2人で分担できない作業範囲を言います。

この考え方・方法は、工場で用いられるIE(管理工学)の考え方・方法であり、これをデスクワーク(業務)に適用したものです。

改めて、職務内容の記述方法を整理して説明すると次のようになります。これは、IEの作業マニュアルの記述方法とVEの目的と機能の記述方法の両方を業務に適用したものです。

  1. 「◯◯を◯◯する」と書く。つまり、目的語+他動詞で簡潔に書く。
  2. 「◯◯する」の部分は、目、口、耳、手、頭などが使われている様子が分かるように具体的に書く。つまり、見る、話す、聞く、渡す、考えるなどと書く。確認する、送付する、検討する、などの抽象表現は使わない。
  3. 1業務1表現とする。つまり、「◯◯をして◯◯をする」などと書かない。
  4. ◯◯させる(使役)、◯◯してもらう(受動)などと書かない。つまり、人の職務は書かない。自分の職務だけを書く。
  5. 書類名は正しい固有名称をきちんと書く。
    例えば、「売上の報告書を見る」と書かないで、「A製品売上実績報告書を見る」と書く。
  6. 書き直す、見直す、再度言う、再度読み直すなど、実際に起こりうることをありのままに書く。原因を追究して、ムダを発見し、改善するのが目的なのできれいごとは書かない。
  7. 職務が途中で2つの流れに分かれたり、流れが変わる場合は、共通の流れを書くと共に、途中から場合分けをして書く。これは通常、業務要件が途中から変るためである。
  8. 人から自分へ、自分から人へ職務が移る時は、その行為を明示して書く。職務の始まりと終わりが分かるようにするためである。例えば、営業会議開催通知をBさんから受け取る。新製品開発企画書をCさんへ渡す。
  9. 会議に出席する場合には、「B製品営業会議に出席する」などと具体的な会議名を書く。なお、出席する会議の名称を一覧にしておき、「各会議に出席する」とまとめて書いてもかまいません。
  10. 出張する場合には、「名古屋支店に出張する」と出張先を書く。
留意事項
  1. 職務の機能(役割)は書く必要ありませんが、職務目的は必ず書いて下さい。
  2. 業務要件が新たに見つかった場合には追加設定しておきます。
  3. 職務を進める手順に沿って書くと記述漏れが少なくなります。
  4. 部門によって、あるいは人によって、職務記述の分量が大きく異なります。

上記4についてですが、通常、最も記述する分量が多い部門は総務部です。1年間の職務を記述するのに、A4の大きさで40枚から50枚必要です。職務の種類が非常に多く、しかも、1年に1回しか行わない職務が多いからです。

最も分量が少ない部門は研究開発部門で、1年間の職務を記述するのに、A4の大きさで数枚で済んでしまいます。1年間同じ職務を毎日繰り返し行っているためです。

なお、経営者(社長、役員)の場合は、1年間の職務を記述するのに、A4の大きさで2~3枚で済んでしまいます。なぜなら、1年中、同じ仕事ばかりで、通常、会議に出席することしかしないからです。

4.職務記述書記入例

以下はある中小企業の職務記述書の記入例です。企業秘密に関わる固有名詞は削除、または仮名を用いています。なお、記入欄の職務目的については、「3-2 業務の目的と機能(役割)の明確化」をご覧ください。また、工程記号については、「3-1 業務の価値分析による無価値業務の廃止・削減」を、ベクトルについては、「3-7 市場(顧客)志向による内部管理業務の廃止・削減」をご覧ください。

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