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開発&コンサルティング

4-19 要員計画の立案と人の再配置(人事異動)

1.要員計画の重要性について

原点に戻って、そもそも業務改革は何のために行なうのかを再確認すると、業務改革の目的は各社いろいろですが、「中期経営計画の達成」が目的になる場合が多いです。なぜなら、中期経営計画は業務発生の源だからです。しかし、実際には業務改革活動を行っても中期経営計画が達成できない企業が多いのです。その原因は、

  1. 経営計画が中期経営計画をブレイクダウンした計画になっていない。
  2. 業務計画が経営計画を実施できるような計画になっていない。
  3. 業務計画どおりに業務を行っていない。

などです。つまり、それぞれ計画し、実施する内容が、中期経営計画⇒経営計画⇒業務計画⇒業務実施、とつながっていなのです。

そもそも、経営戦略を実施するために中期経営計画を立案し、経営戦略⇒中期経営計画⇒経営計画⇒業務計画と順にブレイクダウンしてきたわけです。したがって、それぞれの内容がきちんとブレイクダウンされているかを再確認する必要があります。

そして、業務計画を実施するために、業務を担当する人の計画、すなわち要員計画を立案して、経営戦略⇒中期経営計画⇒経営計画⇒業務計画⇒要員計画⇒業務実施、とつなげれば良いのです。

本来、業務は組織の各機能(部門)別に分割されます。これを業務分掌と言いますが、各部門でそれぞれの業務を確実に実施して初めて経営計画が達成できるのです。このために、業務計画を立案するわけです。しかし、業務計画通りに実施できないことが良くあります。

その主な原因は業務を実施するための要員計画がきちんとできていないからです。したがって、要員計画も重要であることが分かります。実は、業務改革活動で最後に重要なのは業務計画と要員計画なのです。

2.要員計画に必要な職務設計の方法

業務の再編成が完了し、業務計画を立案しましたら、次に、要員計画を立案することになります。業務計画を実施するためには要員計画が必要で、そのためには業務を職務(個別業務)単位までブレイクダウンする必要があります。職務とは1人ひとりが行う仕事のことを言います。

要員計画を立案するためには各職務についていろいろなことを決めておかなければなりません。このことを職務設計といいます。ちなみに、業務設計は部門単位の業務の設計で、職務設計は職位単位(1人ひとり)の職務の設計です。

職務設計は1人ひとりの職務(仕事)について設計し、その内容を職務記述書に記入します。具体的には、職務の目的、職務の機能(役割)、職務の方法、職務時間、職務要件、必要能力、必要経験年数などを書きます。

設計ですから計画立案であり、予定です。従来行っていた仕事(職務)も新規の仕事(職務)も、新たに設計します。なぜなら、従来行っていた職務でも、方法や時間などが従来と異なる場合があるからです。

従来行っていた職務は設計しやすいですが、新しく行う職務の設計は難しいので、参考になるような類似職務や、他社の職務情報、参考文献などがあれば参考にします。しかし、参考にする職務情報がなければ、予想するしかありません。

職務設計の方法は、基本的には業務設計と同じですが、1人ひとりの仕事ですから、業務よりも詳細になります。つまり、職務の受入(イン)、職務の実施過程(プロセス)、職務の伝達(アウト)のレベルまでブレイクダウンします。

例えば、(1)上司からA~Eを実施するよう指示を受ける、(2)Aを実施する、(3)Bを実施する、(4)Cを実施する、・・・・・・、(8)A~Eの実施結果を上司に話す、と言うように、仕事の手順に沿って実施するように職務設計すると間違いなく設計できます。

職務設計をした内容は、職務記述書(職務手順、方法、時間など)と職務明細書(要件、必要能力、必要経験年数など)に分けて書く場合もあります。重要なのは、要員計画の立案に必要な職務設計をすることです。

3.要員計画の立案方法

要員計画は人数と能力の計画です。まず、職務記述書を見て、職務ごとに職務の時間と必要能力を参考にしながらおよその人数と能力レベルを決めます。人数は、通常の標準的な能力を持った人を1人として、必要能力に応じて0.8人とか1.2人という具合に計画します。能力レベルについては、企業で決めた資格等級を当てても良いと思います。

また、特殊な能力や資格を必要とする職務については、その能力や資格を有する人を念頭に要員計画を立案します。もちろん、この時には◯◯さんを念頭にするわけではありません。新たに採用する場合もあるからです。

次に、できるだけ1人1日8時間になるように職務の量(時間)を加減します。これは負荷と能力との調整ですが、標準的な能力の人が1人1日8時間でできるように職務の量(時間)を加減するわけです。要するに、残業をしないように1人分の職務量(時間)を加減するわけです。

最後に、1人ひとりの職務ごとの要員計画を部門単位で集計して各部門(係、課、部)の要員計画にまとめます。要員計画はあくまで計画であり、実際にその計画通りに要員が充当されるとは限りません。人数が足りないとか、必要とされる能力のある人がいない、ということが良くあります。

そこで、社内で人数を確保するために現状業務の効率化をさらに進めるか、あるいは、社外からの採用計画を立てることになります。

この際に、要員がいないからといって、要員計画を修正してしまっては何もなりません。なぜなら、要員計画は業務計画を実施するために必要な人の計画であり、また、業務計画は経営計画を基に立案しているのですから、この要員計画は絶対に変更してはいけないのです。もし、変更してしまうと経営計画が実施できないことになります。その結果、中期経営計画が達成できないことになります。

このように考えると、業務設計と職務設計、業務計画と要員計画などがいかに重要かが分かると思います。もし、これらの設計や計画がきちんとできないとすれば、結果的に中期経営計画が達成できなくなり、業務改革活動の目的が果たされなくなってしまうのです。

4.人の再配置(人事異動)の方法

職務に適した人を割り当てるのは難しい問題で、いわゆる適材適所が上手にできないのが普通です。特に日本の企業は人を決めてからその人に合った職務を決めるので適材適所が上手に出来ないのです。また、日本の企業は、「日本人は誰でも同じ考え方や価値観を持っている」という前提で職務を割り当てるからダメなのです。

本来、人は誰でも異なる考え方や価値観を持っているのです。したがって、従業員はすべて外国人だと思えば適材適所ができるようになります。なぜなら、人が基準ではなく、職務を基準に人を割り当てるようになるからです。

なお、「4-16 人事制度の見直し」で説明しましたように、複数の人事制度を設定して複合的に運用します。そして、本人の希望を基に、(1)企業固有の業務に取り組む人、(2)攻めの業務に取り組む人、(3)守りの業務に取り組む人の3つに分け、適材適所を目指して人の配置を行うというのが筆者の基本的な考え方です。

この際に重要なのは、人の能力です。能力をコンピテンシーと捉えても、実力と捉えてもかまいませんが、 要するに、成果に結びつけることができる能力のことです。そして、その能力は日ごろの行動によって目に見えて分かるはずです。したがって、能力を評価し、職務に必要な能力を持った人を配置すれば良いのです。

さて、人事異動は、短期的な業績だけではなく、長期的な業績向上のためには人の育成も考えて行わなければなりません。このために、短期と長期の育成と業績向上というマトリックスの枠組みで検討して人選すれば良いと思います。つまり、本人の意欲(やる気)も考慮して長期に育成する価値がある人かどうかを見極めて人選します。

なお、既に説明しましたが、育成のためには、少し無理かなと思われるような仕事を担当させるのが良いのです。これが人事異動と能力開発の基本的な考え方です。

具体的には、その人の能力の常に20%アップ程度を目指すのがちょうど良く、それ以上に難しい仕事では能力開発をあきらめ、ストレスがかかって逆効果になってしまいます。また、その人の能力でできる仕事ばかりをやらせるとマンネリ化してしまい、能力以下の仕事ばかりでは堕落し、いずれもやる気をなくしてしまいます。以上の点を考慮して人事異動するのが良いと考えます。

なお、最近では既に、一部の企業では集団主義が崩れて、個人主義に変わりつつあります。人手不足により、会社の都合より個人の都合を優先するようになっていますので、会社の都合だけで人事異動をすることはできません。

例えば、ある企業では80%以上の従業員が転勤したくないという調査結果もあります。家族と一緒に暮らしたい、親の介護が必要、などで転勤したくないのです。

これは当然のことです。個人の考え方や価値観を重視しない企業、個人の都合を考慮しない企業は人材を確保するのはできないと思います。

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