戻る

日本経済新聞から引用
(2021年1月1日)

『多くの企業で「ジョブ型雇用」の運用が始まり、生産性向上やイノベーションの果実を得るための挑戦が加速する。いかに個人のやる気を引き出す仕組みを作れるか。アフターコロナの「働きがい改革」が始動する』

『今年からジョブ型雇用を導入するKDDI。4月入社の約270人の4割は自身の専門性を生かせる部署への配属が確約されている。「入社後の仕事のイメージがクリアで全く不安はない」「ジョブ型雇用1期生」の1人、筑波大学の文谷真由香さんは(22)は目を輝かせる』

『白岩徹執行役員は「若い世代ほどこれをやりたいという意思が明確。ジョブ型であれば優秀な才能を採りやすい」と話す』

『日本では従来、職務内容を限定せずジョブローテーションを通じて幅広い業務を経験させる「メンバーシップ型雇用」が一般的だった。定年まで雇用は保証される一方、会社から命じられる異動や転勤は拒めない。大量生産の製造業などと親和性が高く、企業が柔軟な人材戦略を組めるメリットはあったが、働き手の主体性は損なわれ熱意を失う人も少なくなかった』

『昨年、日立製作所や富士通など日本を代表する企業がジョブ型雇用の本格導入を決めた背景には、メンバーシップ型雇用ではイノベーションが生まれないとの危機感がある。三菱ケミカルホールディングス(HD)は今年から社内公募による人事異動を始める。必要な人材を配置する「適材適所」への転換だ。「生産でも開発でもあらゆる仕事にプロフェッショナルが必要になる」と越智仁社長は強調する』

『働き手の主体性や熱意を測る尺度として世界で注目を集めるのが「ワークエンゲージメント」だ。2000年代に欧州で確立した概念で「働きがい」と訳される。近年の働き方改革の主眼となってきたのは労働時間の短縮だが、今後日本に求められるのは「働きがい」の向上だ』

『キリンホールディングス(HD)は今年からオフィスでも在宅でもない「第3の働き場所」の活用を本格化する。飲料事業部の戎野歩さん(32)は息子を保育園に送った後、集中して仕事に打ち込めるシェアハウスに期待する。「会社任せではなく仕事の時間も場所も自分で選び、成果を出す工夫が求められている」と感じる』

『テレワークの副作用も表面化している。米オラクルなどが2020年7月~8月、11ヶ国の約1万2千人に実施した調査では、テレワークで生産性が上昇したと答えた人の割合は世界平均で41%だったが、日本は15%にとどまり11ヶ国中最低だった。職務内容に限定がない日本では個々の働き手の目標設定は不明確。上司からの指示に依存する傾向が強く、コミュニケーションが希薄な在宅勤務になると何をやっていいか分からなくなる』

『リクルートキャリアの藤井薫氏は「2021年はテレワークに対応したアサインマネジメントの元年になる」とみる。上司が的確に部下に仕事を割り振り進捗を管理し、目標達成につなげるマネジメントの質の向上が求められる。目標設定が明確にできるジョブ型雇用の導入との組み合わせも効果的な選択肢だ』

『働き方改革で労働時間の短縮は進んだ日本だが、限られた時間から付加価値を生み出す労働生産性はなお先進国で最低だ。ひとり1人の働き手の働きがいと生産性を高める不断の努力が求められる』

戻る